PICマイコン制御用のターゲットボード設計編

<項目>PICマイコンの開発には何が必要か?
まずスペアナを制御するPICマイコンの開発を進めるにあたって何が必要なのでしょうか。

  1. パソコン
    開発を進めるにあたり、パソコンは必要です。PC/AT互換機が一般的で良いでしょう。日本電気製のPC9821シリーズなども使えます。
    OSはMS−DOSかWindows95以上が必要です。現在OSの主流はWindowsへと移っており、、またエディタやコンパイラを同時に開いて効率よくプログラミング作業ができるWindowsが良いと思います。ただし、WindowsNT系ではライタを動かすソフトウェアが限定されていますので、注意してください。
     
  2. アセンブラ・ソフト
    記述したプログラムをPICが理解できるデータに変換する必要があります。これを行うのが、アセンブラと呼ばれるソフトウェアです。PICの開発元であるマイクロチップ・テクノロジー社が、アセンブラ・ソフトMPLABを無償配布していますので、これを利用するのがベストです。
     
  3. ライタ・ソフト
    PICにプログラムを書き込むためのソフトウェアが必要です。制御用のソフトは多数作られていて、インターネットなどを通じて入手できます。表1に示すようなライタ・ソフトがフリーウェアとして出回っています。

    表1.フリーウェアおよびキット付属のPIC書き込み用ソフウェア (トランジスタ技術:2000年7月号:p.180より)
    名称 作者 ファイル名 在処 動作環境 備考
    EasyPIC for Win95
    Ver.0.81
    落合幸喜 氏 epw.zip "K's works"
    http://www.d1.dion.ne.jp/~k_ochiai
    Win95
    以上
    対応PICの種類が多く、
    マニュアルも完備
    PICWW
    Ver.2.17
    石島誠一郎 氏 PICWW217.lzh http://www.ops.dti.ne.jp/~ishijima/
    sei/picww/picww_index.htm
    Win95
    以上
    PICEE
    Ver.0.28
    野澤康夫 氏 PICEE028.EXE @niftyのパソコン工作フォーラム
    (FDEVICE)のLIB10の#72
    MSDOS 16C5x以外の大部分の
    PICに対応
    PICEE
    Ver.0.26
    野澤康夫 氏 PICEE026.EXE @niftyのパソコン工作フォーラム
    (FDEVICE)のLIB7の#165
    TR9708A.LZH特集私のアイデア設計&
    製作のディレクトリS9内のPICEE.EXE
    MSDOS 16C5x以外の大部分の
    PICに対応
    AKI−PICプラチナ
    キットのライタ
    秋月電子通商 Picd1203.lzh http://www1.tomakomai.or.jp/
    akizuki/ftp.htm
    DOS/V AKI-PICプラチナキット用

  4. ROMライタ(ターゲットボード)
    ライタはPICの内蔵メモリにプログラムを書き込むための道具です。「プログラマ」ともいいます。一方、ここで製作するターゲットボードとは、ROMライタの機能を搭載し、かつ実動作が確認できる万能ボードです。チップをターゲット・ボード上に搭載したままで、プログラムの書き込み/書き換え/実動作テストができるので、効率よくプログラム開発ができます。
    それでは、次にターゲットボードの製作に移りましょう。


<項目>PICマイコン・ターゲットボード製作のポイント

実動作テスト時に、動作を確認しやすくするために、ちょっとした工夫をしておきます。それは全入出力ピンに発光ダイオードをバッファを介して接続しておくことです。これでデバッグの時に、発光ダイオードを点灯/消灯する命令をプログラム中に追加して、プログラムの流れが目で分かるようにするとデバッグが少しやりやすくなります。なお発光ダイオードは、動作時に数mAの電流が流れるので、バッファを介して電流を供給します。直接PICに発光ダイオードを付けてしまうと、実機との接続に影響が出てしまいます。

<項目>ライタ部の回路構成
図1のライタ本体部の回路構成は、マイクロチップテクノロジー社のアプリケーション・ノートAN589で掲載され、野澤康夫氏がトランジスタ技術誌1997年8月号で、後閑哲也氏がPIC活用ハンドブックで紹介しています。ライタ機能の他に実機動作をさせるために、一部回路を追加しています。

ターゲット・ボードのライタ部回路構成図
図1. ターゲット・ボードのライタ部回路構成図


ライタ本体部分は、トランジスタ3個と、IC1個というシンプルな構成です。いろいろと自作でも多機能なライタがあるようですが、簡単に作れることに重点を置いていることと、多くのフリーウェアが対応していることで採用しました。このライタ部はプリンタ用コネクタを介して接続します。PC9800シリーズとPC/AT互換機で、コネクタの種類が異なりますので注意してください。図はPC/AT互換機のものです。
電源部はLM317Tという任意の定電圧が得られる便利なICを使って高電圧プログラムモードに必要な+13Vを得ています。+12Vの三端子レギュレータIC(7812)のGND端子にダイオードを付けて、+12.5V〜13Vを得る方式も簡単でよいのですが、この+13Vは±0.25Vの範囲に入っている必要があるので、安定性を重視してLM317Tを採用しました。PIC16F87xは、低電圧プログラミングといって+5Vだけでも書き込みが可能なのですが、このモードでは、RB3 ピンはプログラミング機能専用となっており、汎用I/O ピンとしての機能はありません。また、一度高電圧プログラミングすると低電圧プログラミングはできなくなり、高電圧プログラムモードの対応だけになります。
さて、+5V電源は三端子レギュレータの7805を使って、各ICの電源として供給しています。ついでに、発光ダイオードを付けて電源ランプの代わりにしています。
ライタ本体部の3個のトランジスタで、書き込み・読み込み・ベリファイと、各状態での供給電圧の切り替えを、パソコンからの信号で制御しています。ICの74LS244は、書き込み、読み出しのDATAとそのタイミング用のCLOCK信号を伝えるためのパソコンとの接続バッファです。
SW1〜3のスイッチは、ライタ動作/実機動作を確実にするための切り換えスイッチです。ライタ動作時には、SW1は2SA1015側に、SW2,3はONに接続します。また実機動作時は、SW1はリセット回路側に切り換え、SW2,3はOFFにします。リセットスイッチは、実機動作時に外部リセットするためのものです。
実は実機動作時にプリンタインターフェース側で、MCLR=+5V、74LS244をハイ・インピーダンス状態に設定することで、スイッチをつけなくとも対応可能ですが、プリンタケーブル未接続時でも単独で実機動作を確認できるようにしています。74LS244はシュミット・トリガ回路のトライステート・ゲートです。コントロール端子(D2,D5)が[L]で通常のバッファ回路と同じ動作をしますが、[H]にするとハイ・インピーダンス状態になります。
作製上の注意点として

以上の注意点を守れば、まず動作するとのことです。


<項目>入出力ピン周りの回路構成
PIC入出力ピン周りの回路構成を図2に示します。PICの入出力ピンには、バッファ回路を介して発光ダイオードを実装します。また、実機との接続のためコネクタを付けておきます。ケーブルを容易に脱着できる構造にした方が汎用的なターゲット・ボードになります。

PIC入出力ピン周りの回路構成図
図2. PIC入出力ピン周りの回路構成図

バッファ回路ですが、発光ダイオードを駆動できるICであれば何でもOKです。私のところでは、アナログ用のICではありますがμPC451という単電源OPアンプがたくさんあり、ジャンクボックスの部品の整理を兼ねて、手持ちの部品を何とか利用できないものかと思いました。図3-1にバッファ周りの回路構成図を示します。

バッファ周りの回路構成図
図3-1. バッファ周りの回路構成図


PIC16F8xxシリーズでは、ポートAとポートEはリセット後はアナログ入力モードになります。端子電圧を安定化させる意味で100kΩのプルダウン抵抗を付けています。また、ポートAの中でも、RA4ピンは特別な端子になっていて、出力がオープンドレインになっているので、RA4ピンを出力に使う場合には、プルアップするなど外部で電圧を加えてやる必要があるので要注意です。
さて、発光ダイオードの電流制限抵抗ですが、図3-1の回路では200Ωと変更しました。μPC451の入力電圧(PIC入出力ピンの電圧)が+5Vであっても、電源電圧が+5Vのため出力回路が飽和して+5Vまで出力されません。したがって、680Ωでは少し発光ダイオードが暗くなります。そこで、200Ω程度まで抵抗値を下げて明るさを調整しました。OPアンプの種類によっては、出力が飽和すると電圧が出力されないものもあります。図3-1は簡単な回路ですから、ブレッドボードで仮配線して確認してみてください。このときに、適当な明るさになるような発光ダイオードの電流制限抵抗の値を調べておきます。また、飽和したときに入力電流や、電源電流が異常に流れないことを確認しておきます。
読者の皆さんの中には、バッファ回路になぜディジタルICを使わないんだと思う方もいると思います。しかし、このようなアナログのバッファ回路を使えば、A/D変換動作時(アナログ入力モード時)に、PICへ入力される電圧の大小により発光ダイオードの明るさが変化するので、入力電圧レベルが簡易的に分かって便利です。図3-2にμPC451のピン配置図を示します。V端子は+5Vの電源に接続し、V端子はGND接続します。μPC451は1パッケージに4回路のOPが入っていますが、使用しないOPがあれば、OUT端子と−IN端子を接続しておき、+IN端子はGNDに接続しておけばよいでしょう。

μPC451のピン配置図
図3-2. μPC451のピン配置図<Up dated>(2000.12.11)



<項目>シリアル通信を考慮した回路構成
USART(niversal ynchronous synchronous eceiver ransmitter)機能、いわゆる汎用のシリアル通信の機能を持った周辺回路ブロックです。これで、パソコンとRS232Cのシリアル通信でデータ通信を行うことができます。

シリアル通信周りの回路構成図
図4. シリアル通信周りの回路構成図


<項目>PICマイコン・ターゲットボード製作のための部品を集めよう!
表2に、PICマイコン・ターゲットボードのパーツリストを示します。

表2.PICマイコン・ターゲットボード パーツリスト(<Up dated>2000.10.2更新)
品名・型名 員数 メーカー 購入先 備考
プリント基板 SPECTRUM特製    
40ピン・ゼロプレッシャーICソケット  ARIES 秋月 図5参照
PIC16F877 マイクロチップ・テクノロジー 秋月  
セラミック発振子 20MHz 村田 秋月  
36ピンアンフェノールコネクタ[メス]   秋月 図5参照
D-sub 9ピンコネクタ[メス]   秋月 図5参照
基板用10ピンコネクタ[オス]      
発光ダイオード 33      
μPC451 日本電気    
ADM232AAN(MAX232互換) ANALOG DEVICES    
74LS244 各社    
14ピンICソケット(バッファIC用)      
16ピンICソケット(MAX232用)      
20ピンICソケット(74LS244用)      
タクトスイッチ(リセットスイッチ用)   秋月 図5参照
2極スイッチ(リレー切替用)   千石  
LM317   秋月  
7805      
抵抗 100Ω      
抵抗 120Ω      
抵抗 200Ω(180Ω〜220Ω) 33      
抵抗 680Ω      
抵抗 1.1kΩ      
抵抗 2.2kΩ      
抵抗 100kΩ 33      
セラミック・コンデンサ 2200pF      
セラミック・コンデンサ 0.1μF 20      
電解コンデンサ 10μF(16V)
もしくは
表面実装用タンタルコンデンサ
12      
電解コンデンサ 22μF(16V)
もしくは
表面実装用タンタルコンデンサ
     
電解コンデンサ 100μF(耐圧35V程度)      
2SC1815(汎用NPNトランジスタ)
もしくは
2SC4177(表面実装NPNトランジスタ)
     
2SA1015(汎用PNPトランジスタ)
もしくは
2SA1611(表面実装NPNトランジスタ)
      
1S1588(汎用ダイオード)      
リレー G6H−2(12VDC) OMRON    

(注釈:<Up dated>2001.3.21更新)

  1. SPECTRUM特製のプリント基板では、トランジスタ、各種抵抗及びコンデンサに、表面実装用の部品を代用いたしました。
  2. 回路図には特に記載はしませんでしたが、各ICの電源端子には、10μF程度のコンデンサと0.1μFのセラミック・コンデンサをGND間に並列に挿入しています。(なくても特に問題はありませんが、近くの電源ラインにコンデンサを接続した方が動作がより安定します。)
  3. 図1のSW1〜3は、1つの2極スイッチを使うことにより、リレーを同時にコントロールして切り替えられるような構成にしました。
  4. ICソケットですが、一列のICソケットを使うと便利です。SPECTRUM特製のプリント基板では、必ず両面に半田付けできるタイプのICソケットを使ってください。詳細はこちら→PICマイコン制御用のターゲットボード製作のポイント


PIC16F877の外観
PIC16F877の外観
PICマイコン・ターゲットボードの主な構成部品
PICマイコン・ターゲットボードの主な構成部品
図5. PICマイコン・ターゲットボードの主な構成部品<Up dated>



<項目>PICマイコン・ターゲットボードの配線パターンと部品配置例

SPECTRUM特製のプリント基板は、両面板になっています。上面側と下面側の配線パターンを示します。実寸は、縦9cm×横14cmの大きさです。

2000.10.2更新内容:
(1)端子電圧を安定化させる意味で、全ポート(A,B,C,Dの各33ポート)とGND間に100kΩのプルダウン抵抗を付けた。
(2)実機と書込のスイッチの極性が逆だったため、リレー切替用2極スイッチの配線を入れ替えた。また、書込のLEDが「実機」のときに発光するので、「書込」で発光するように修正し、一部ジャンパー配線で対応した。

2000.12.18更新内容:
(3)MAX232の7ピンは、RS232Cコネクタの8ピンと接続するようにジャンパで修正をした
(4)MAX232の13ピンは、PS232Cコネクタの7ピンと接続するようにジャンパで修正をした

2001.3.21更新内容:<Up dated>
(3’)MAX232の7ピンは、RS232Cコネクタの8ピンと接続するようにパターン修正をした
(4’)MAX232の13ピンは、PS232Cコネクタの7ピンと接続するようにパターン修正をした



PICターゲットボード上面側の配線パターンと部品配置例を参照する場合は、
ここをクリックしてください。


PICターゲットボード下面側の配線パターンと部品配置例を参照する場合は、
ここをクリックしてください。



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